5/20 ボクシング観戦 in 有明コロシアム 

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ボクシングの生観戦は久々で、ほぼ半年振りくらい。5/20、ついに村田の真の実力が明らかとなる、日本ボクシング界にとって重要な日です。しかも、世界戦が3連発!

行くっきゃないでしょと思い、ぴあでチケット買って観戦してきました。

●ガニガン・ロペス(判定2-0)○拳四朗

サウスポー王者に大苦戦!

 オーソドックスの拳四朗は右ストレートを、サウスポーのロペスは左ストレートを如何に当てるかがカギでしたが、拳四朗は右ストレートが悉く外されてしまい、空振りが目立つ。左を軸に試合を進めるが、与えたダメージは明らかに王者に軍配が上がる。このままだと、後半に逆転されるかも・・・

流れを止めた8Rの「右ボディ」

主導権を奪い返したのは8Rの右ボディ。通常は右ボディはダメージにならないことが多いが、このパンチで一瞬、王者の動きが止まる。これにより、ロペスの左パンチに切れが無くなり、後半の伸びが若干悪くなった。ボクシングは、この「若干」が重要なファクターとなる事があり、僅差の採点勝ちを掴む要因になりました。

自己採点は115-113で拳四朗。この内容なら2-0の判定も妥当。

これでライトフライ級は日本人4人が世界王者独占

ライトフライ級はすでに3人の日本人王者が存在。さらに拳四朗が勝利したため、まさかの日本人による世界王者の独占を達成。明日の八重樫の結果次第では、ライトフライ級の世界王者トーナメントなんてことも!?

●ファン・エルナンデス(KO 6R)○比嘉大吾

 エルナンデスはまさかの計量失敗。なのにエルナンデスの方が有利!?

王者のエルナンデスは前日計量で200gオーバーしてしまい、再計量もパスできなかったことから、王座剥奪。これにより、比嘉が勝利すれば王者獲得、敗退すれば王者空位という状態に。となると、モチベーション的に比嘉が有利かといえば、むしろ逆。

 最近では、世界戦で王者が減量に失敗した場合、計量をハナから諦めて剥奪されるケースが目立ちます。世界王座は4団体もあるので、剥奪されても試合で圧倒すれば次のチャンスが巡って気安いという背景からでしょう。減量せずに戦えば、体格的に有利な状態で戦えるのも一因ですね。

広いリングを広く使うエルナンデスと、追いかける比嘉の展開

実は今日のリングはかなり大きく(7m以上)、村田戦でのヌジカム側の要求と言われています。このリングでは、フットワーク主体のエルナンデスが優位で、事前予想通り、スイッチを多用しながらリングをぐるぐる回るエルナンデスと、追いかける比嘉という展開が繰り広げられました。

比嘉の踏み込みは強烈!エルナンデスの足を止めてフルボッコで王座獲得!

2Rに比嘉がエルナンデスを捉えて左でダウンを奪うものの、ダメージは無い様子。4Rまではエルナンデスが若干リード。勝負が決まったのは5R、強烈な踏み込みからの左で再度ダウンを奪います。今度は明確にダメージを与えた比嘉は、足の止まったエルナンデスをサンドバック状態でタコ殴りに。エルナンデスは脅威の粘りを見せるも、6R終了間際に力尽きます。勝利した比嘉は13戦13勝13KOのパーフェクトレコードで新王者に。同フライ級の王者、井岡との王座統一戦も期待されるところです。

比嘉は和製「ロマゴン」?

比嘉は、判定の多い軽量級には珍しいパワーファイター。特にすばらしいのは、体制を維持したまま強打が放てることです。これが出来るのが、軽量級のスター「ロマゴン」ことローマン・ゴンザレス。左右のボディを軸に強打を連発できる点も非常に似ています。まだまだ経験値が浅いのですが、今後の展開が非常に楽しみです。

ということで、現時点でも経験豊富な井岡と対等に勝負できる存在と言えます。

○ハッサン・エンダム(判定2-1)●村田諒太

終始ペースを握っていた村田、誰もが勝利を確信したが・・・

強豪との対戦が無いまま世界挑戦したため、ミドル級金メダリストながらも実力に疑問符の声が多かったのが前日までの村田の評価ですが、試合内容は村田が強豪エンダムに引けを取らず、むしろ終始優勢に。

1~3Rは様子見で極端に手数を減らしていましたが、これは予想通りの展開。エンダムは前戦の1Rに強烈な右フックでワンパンチKOを成し遂げており、序盤から飛ばしてくることが想定されたためです。また、エンダムはアッパーも得意で、距離感の無い序盤の村田は左を極力抑えて、被弾を避けていました。

試合が動いたのは4R。カウンター気味の右ストレートがドンピシャで入り、エンダムは溜まらずダウン。以降は、右がズバズバ入る村田と、避けるのに精一杯なエンダム。誰が見ても勝敗は明らかでしたが・・・

有効打はおろかアグレッシブさも無いエンダムが「大差で優勢」!?

村田の判定勝ちが明確だったため、12R終了直後に、電車の混雑を気にして帰宅しだす人がぞろぞろと。こんな楽勝ムードのなか、まさかの「2-1でエンダム勝利」のコール。会場には悲鳴、どよめき、罵声が飛び交う異常な雰囲気に。

ネットでは「手数が少ないから判定は妥当」との声もありますが、それは違いますね。まず、ボクシングの判定は「有効打」「手数」「防御」「主導権」の4要素が基準となり、特に有効打が重視されます。さらに「手数」は、ただパンチを出していれば言い訳ではなく、前進を伴うアグレッシブさ(=攻勢であるか)を判断します。

エンダムは4R以降、有効打が殆ど見られないどころか、下がりながらガードの上をたたくパンチしか放てず、手数が多いとも見なされません。判定が妥当とする人は、ボクシング観戦が浅い人が、只の天邪鬼かのどちらかでしょう。

9Rから12Rの判定が焦点

ジャッジシートを確認すると、勝敗を分けた、即ち評価が分かれたのが9~12Rのポイントです。

全体として、1~3Rがエンダム、以降は村田というのが妥当なところ。自分の採点も117-110で、村田勝利としたジャッジとほぼ同じ。エンダム勝利の2者も8Rまでは似たような内容なのですが、大きく異なるのが9Rからの採点。村田勝利のジャッジはこの間を全て村田優勢としていますが、残り2者はなんと全てエンダム優勢に。4ラウンドもの採点が真っ二つに割れることなど、そうそう有りません。

例えば9Rのエンダムは終始防戦一方で、そもそもの手数も落ちていましたが、このラウンドをエンダム優勢と判断したジャッジがいたことに驚きを隠せません。

過去の「疑惑の採点」の場合は「見方によってはありえる」パターンがほとんど。近年では、手数が少ないがカウンター気味に有効打を当てる消極的なボクサーが僅差判定で勝利した場合に「不可解」と言われるケースが多いです。今回のように、有効打が無く下がり続ける選手が、大幅に判定が分かれた挙句に勝利するなんて、あまり見られません。

WBA会長ですら疑問を投げかけている

海外のネットの反応を見ても、今日の判定結果に疑問を投げる声が多く届いており、その一人は、なんとWBAのメンドーサ会長。

117-110は僕の採点と全く同じで、これが普通の感覚です。恐らくは、ダイレクトリマッチが組まれるでしょうが、じゃあ次は勝てるかといえば、言い切れないのがボクシングの世界。村田にとっては明確に勝利した試合を負けにされ、さらにリスクを負わなければいけない、次戦までモチベーションが保てるのか心配です。

負けても村田の評価が上がった

残念ながら、戦跡には「1敗」が付いてしまった村田ですが、ボクシング界では逆に評価が上がったのではないでしょうか。近年のボクシングは「勝ったこと」よりも「誰にどういう内容だったか」が重視される時代です。最近の例だと、名選手ゴロフキンを追い詰めたダニエル・ジェイコブスは僅差判定負けながらも逆に評価が高まりました。

村田はこれまで強い相手と戦っておらず、戦績は綺麗だが評価しにくい選手でした。しかし、今日の試合で強豪クラスのエンダムを明確に上回る能力であることをハッキリと示しました。少なくとも、これまでの「ハリボテの戦績」「全く通用しない」という評価は、今後は無くなるでしょう。